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水の中で③ 絵里Ver

水の中で① 絵里Verを読む
水の中で① 一哉Verを読む
水の中で② 絵里Verを読む
水の中で② 一哉Verを読む



2005年 8月27日
PM01:15

何が起きたか解らなかった。
突然の左手の衝撃。
私の進行方向のやや左に、
よろめきながら自転車がよたよたと徐行していく。

痛い・・・・

あの自転車に乗っている男に左手が当たったのだろうか?
男は、蛇行しながら・・・・・倒れた。

一気に眠気は覚めた。

絵里「ごめんなさい!」
私は駆け寄った。
返事がない・・・・

近寄ると倒れている男に見覚えがあった。
絵里「一哉??」
返事が無い・・・
目の焦点が合っていない・・・
絵里(やだ、死んじゃうの?私殺人犯?あ、でも誰も見てない・・)
私が内心そう思っていると、
一哉「まだ死んでないよ・・・」
ドキッとした。
心が読まれていると思った。
絵里「ごめんねーわざとじゃないの!絶対わざとじゃないの・・・ゴメンなさい!」
一哉の返事がなかった、まだ目の焦点があっていない。
絵里(やっぱり逃げようかしら・・)
一哉は少し笑顔で自分の体を確かめるように体を動かした。
一哉「ノックアウトってこういう感じなんだ・・」
そう言いながら一哉が立ち上がった。
絵里「ホントゴメン!あの・・・そうだ!一哉ご飯食べた?
食べてないよね?ね?ね♪うん、じゃぁご飯食べよ!何でもおごちゃうわよ♪」
返事はないが一哉の目の焦点は合っていた。
私は安心した。
自転車を近くに停めさせて、近くのファーストフードに向かった。

久しぶりにファーストフード店に来た。
別にそこまで健康志向というわけではないが、最近あまり口にはしていない。
なんとなく一哉に媚びたチョイスだった。

二人でセットを頼んで席に着いた。
一哉の右のこめかみ辺りが赤くなっている。
私の左手は何もなっていなかった。
絵里「ほんとごめんね・・痛い?」
一哉「う~~ん、まぁ平気かな?」
一哉「でも凄い確立だね、2日続けて偶然合うなんて。」
絵里「そうだね~以外と私の運命の人だったりして~♪」
冗談で言ったつもりだが、一哉は照れくさいのか目線を背ける。
落ち着かない様子で、ジュースを飲む一哉が妙に可愛かった。
一哉「絵里はあそこで手を振り回しながら何してたの?」
絵里「別にブンブン振り回してた訳じゃないけど、
お母さんがやっている音楽教室があって、そこの片づけを頼まれちゃってさ~」
一哉「この近くの二階建てのやつ?」
絵里「そ~そ~知っているんだ~。私中学生くらいまでその2階に住んでいたんだよ~」
一哉「ほんと近所だったんだね。」
それから暫くして、私はトイレにいった。


洗面台で手を洗っていると、左手少し痛む。
絵里(私本当に人を殺したら逃げちゃうのかしら・・)
一連の事を考えていたらおかしかった。
洗面台の鏡で自分の顔を確認した。
笑顔の自分がなんだか嬉しかった。

席に向かう途中、一哉が同級生らしき男の子と話しを終えたような感じだった。
男の子たちは店から出て行く。
絵里「学校の子?」
一哉「うん。」
なんだか元気が無かった。
私は元気付けようと、一方的にひたすら話した。
一哉も一生懸命話しに乗ろうとはしてくれるが、何処か上の空だ。
一哉がトイレへ行った。

ふと携帯に目をやると、昨日のメールが頭をよぎる。
一哉がいるときは気にならなかった。
絵里(はは、私恋したのかな?しかも14歳に・・・ウフ、ロリコンね私・・)
まるで他人事のように感じたが、なんだか面白くて笑顔になった。

一哉が戻ってきた、
一哉「あのさ、絵里がこれから行く音楽教室の片付けついて行っていいかな?」
絵里「ほんとに?願ったり叶ったりよ~、うん、おいでおいで♪」
思いがけない申し出だった。
唐突で少しびっくりしたが、その申し出は助かった。
トイレに行く前より、一哉の表情がいくらか明るくなっていた。

絵里「んじゃ、行くわよ♪レッツラゴー♪」
一哉は黙って付いてきた。

音楽教室に着くと、預かっていた鍵で扉を開けた。
教室内はいきなり物凄い熱風を吹き出した。
私も一哉も一瞬で汗ダクダクだ。
2人で手分けして店内のエアコンにスイッチを入れた。
温度が下がるまで間、ピアノの置いてある部屋で扇風機にあたった。
私が扇風機の風を独り占めしていると、
一哉は無言で私をズルズルと引きずり、私と扇風機を引き離し隣りに座らせた。
引き離した際、私の胸がわずかに一哉の腕に当たる。
一哉の腕は意外と男っぽかった。
不覚にもドキッとした。
一哉の方を見た。
まったくの平常心の顔をしていた。
絵里(気づかなかったのかしら?まったく嫌な子ね!)
私は心のなかでむくれてた。

暫らくして一哉が立ち上がる。
ピアノを眺めていた。
絵里「あ、そうだ、ピアノ弾いてみてよ♪見たいな~聴きたいな~弾くべきだと思うな~♪」
一哉「いいよ。」
思いの他すんなり承諾された。
一哉が椅子に座った。妙に大人っぽくか感じる。
意外と普通の顔をしていて緊張感などは感じなかった。

静かに一哉はピアノを弾き始めた。
パッヘルベルのカノンだった。
その演奏は、凄かった。
熱さも時間も忘れた。
演奏が終盤になると終わらないで欲しいと、心のそこから思えるくらいの演奏だった。
しかし演奏は終わりにさしかかる。
とても涼しい顔をして弾く一哉。
どうしてあんな普通の顔して、こんなに切ない演奏が出来るのだろう。
一哉は静かに演奏を終えた。

絵里「すごーい、凄く素敵!なんか凄く感動した」
静かな表情をしていた一哉が少し恥ずかしそうに笑った。

一哉「絵里もピアノやっていたんだよね?何か弾いてみてよ」
絵里「ええ~嫌だよ~一哉の後は弾きにくいよ~一哉凄いんだもん」
確かに一哉の後は弾き辛いが、理由はそれだけではなかった。
学生時代の事故の影響でどの程度右手が動くか不安だった。
日常生活にあまり不自由を感じる程ではないが、
自分の右手が前と違う。
その事実を直視せざる終えない状況には立ちたくなかった。

一哉「じゃぁ、一緒に弾こう。」
一哉は笑顔で言った。
あまりにも優しい口調だった。
私は無言でうなずいた。
一哉に椅子を半分ずれてもらうと、連弾をした。
演奏した曲は、森の熊さん、かえるの歌等幼稚な曲ばかりだが、
私は楽しかった。
時には二人で歌いながら演奏し、二人で飛び跳ねながら演奏した。
とても楽しい時間だった。

知らないうちに部屋の温度はすっかり下がっていた。
時間は午後4時を過ぎている。

絵里「あ、2階掃除するの忘れてた~」
一哉「あ、そういえば・・」
絵里「楽しかったら、すっかり忘れてたぜい♪」

2人で2階に向かった。
2階の部屋は懐かしさが半分、新鮮さが半分という感じだった。
見覚えのあるものも多いが、新たに運ばれた物も多く、
自分の知っている物を一つ一つ探していく作業もなんだかワクワクした。
私は1つ1つ一哉に説明して回った。
でも最後は、
一哉「片付け終わってからにしようか?」
と突っ込まれ、シュンとした。

部屋の中の不用品は大分まとめて1階に下ろした。
一哉がいてくれたので、作業効率は非常によかった。

私はおもむろに押入れを空けた。
全くの手付かずだ・・・
無数のダンボールが中につまっている。
中身は皆目見当も付かない。

二人で1つずつダンボールを開けていく・・・
中身を確認すると殆どが不用品と言っていいものだった。
私が何個めかのダンボールを開けると、
どこかで見た事あるような土粘土細工が出てきた。
象の粘土細工だ。意外とよく出来ている。
絵里「あぁぁぁ~」
一哉「???どうしたの?」
絵里「これ、妹の変わりに夏休みの宿題で作ってあげた奴だ。」
絵里「ほら、像のお腹の下に〔4年1組飯田早百合〕って書いてあるもん!」
一哉「なんか上手だね~」
絵里「ふふふ、当然よ!」
それ以外にも私と早百合の作品がダンボールの中からたくさん出てきた。
私はその作品や絵を1つ1つを丁寧に観た。
一哉はそんな私に今度は何も言わなかった。
いつのまにか、私は古いソファーに腰を下ろし作品をじっくり眺めていた。
一哉も気が付けば私の隣で同じように私の持つ絵を見ていた。

何枚目の絵だったの覚えていない。
私はその絵を見た瞬間に、体と心が凍りついた。

6年2組飯田絵里
その絵の作者だ。
タイトルは父親

その絵には明らかに見覚えのある男が描かれている。
私の知っているその彼とは少し年齢が違うが、
顔の全てのパーツが酷似している。
穏やかな雰囲気、誠実そうな人柄、優しい目。
彼を表現する殆どの物がその絵には詰め込まれている。
その絵に描かれている人は、

夫そのものだった。

私の記憶は物凄い勢いで小学校6年、
その絵を書き出した時を想起させた。

私は小学校6年の2学期の頃、家族を描くという課題を美術クラブの活動中にこなしていた。
父親がいないという事に子供ながら一定の割り切りはあった。
只、私はその時反抗期もあってか、母親としばしばぶつかっていた。
喧嘩により涙を流した事もある。
そんな時、父親がいれば・・・と強く感じる事もあった。
それ以前から、私の頭の中には父親がいた。
勿論実在しない理想の父親だった。
普段はその実在しない父親の存在だけで満足できた。
しかし、その課題を言い渡された時、喧嘩ばかりしてしまう母親を描く気になれなかった。
そして私は父を描いた。
長年私の中にいた父親を描いた。
母へのあてつけも含まれていたのかもしれない。

私は夢中で描いた。
今まで頭の中にしかいない自分の父親を描いた。
父親がいれば、してもらいたかった事。
父親がいれば、経験する事のなかった、悲しい気持ちを。
その時まで生きてきた、全ての父親への愛情とわがままをその絵に描いた。

そして完成したのは今私が見ている絵だ。

涙が出ていた。
彼の浮気以降ずっと苦しめられていた、
頭と心と体の喧嘩。
その頭が、音を立てて崩れていく。
彼との時間の中で紡がれていった鎖が勢いよく解れていく。
私の頭と心と体は1つになった。
涙が出た。

でもその直後から、津波のような罪悪感が襲ってくる。
私は彼に父親を感じていた。
私は一人の女として彼を愛していたのか?
私は彼自身を受け入れていたのだろうか?
私は彼の何を愛していたのか?
彼はそれに気づいていたのか?
私が彼を見ながら常に違うものを見ていたということを。
〔俺たちどうする〕
あの言葉が頭を駆け巡った。
必死に二人で過ごした数年を遡る。
その中で父親ではなく、彼個人を愛していたという事実が欲しかった。
〔俺たちどうする〕
必死に探した。
〔俺たちどうする〕
判らなかった。
何も判らなかった。
頭の中は完全にパニック状態だった。
私は知らないうちに声を上げて泣いていた。
気が付いたら、一哉にしがみついて泣いていた。

頭が痛い。



2005年 8月27日
PM19:52

私はいつの間にか寝ていた。
目を覚ますと私は、ソファーの上で一哉の膝枕だった。
一哉の手が私の背中に回っている。
私は泣きながら一哉にしがみついたのを思い出した。
体を起こすと、一哉は寝ていた。天井に向かって口をあけて寝ている。
疲れているのだろう。
私が起き上がったせいか、一哉が私の方に倒れてきた。
私は倒れてくる一哉の体を支え、一哉の頭を自分膝においた。
ゴトン!と音がした携帯電話だ。
一哉の顔を見る。
たまに見せる大人びた表情は無く、あどけない顔でぐすり寝ていた。
絵里(私が泣いている間ずっとそばに居てくれたんだね。)
一哉の髪を撫でながら思った。

父親の絵が視界にはいる。
必死で目を背けた。
さっきよりいくらか落ち着いたが、まだまともに考えられない。

私は一哉の携帯を拾っておこうとした。
起こさないように慎重に腕を伸ばし掴んだ。
掴んだ拍子にボタンを押した。
携帯のモニターには、



779 名前:名無しのクラスメイト 投稿日: 2000/08/27
本日一哉君はマックで母親と楽しくデートしてました。

780 名前:名無しのクラスメイト 投稿日: 2000/08/27
一哉の彼女は親父だろwww

781 名前:名無しのクラスメイト 投稿日: 2000/08/27
  一哉ネタ飽きた・・・でも、詳細希望

見てはいけないと思ったが、遡って行くと、一哉への書き込みがたくさんあった。
私は携帯を閉じ、ソファーの肘掛の所へ置いた。

意外だった。
これだけ美少年で、ピアノも上手く、頭の回転もいい少年が、いじめられている事が。
一体何があったのだろう。

暫らくして一哉は目を覚ました。
一哉ははじめ自分の状況が理解できてなかった。
一哉「あれ?なんで膝枕?」
絵里「へへへ、こちらこそ膝枕ありがとね♪」
寝ぼけているのか、一哉はポーとした顔をしてた。
一哉が携帯を手に取ると、
一哉「もう、7時過ぎているんだ。」
絵里「私がグズちゃったからごめんね」
一哉「いや全然気にしないで。」

一哉に帰って欲しくなかった。今は一人居るのが嫌だった。
絵里「一哉、お腹すかない?」
一哉「う~ん、空いたかな~空いているな~」
絵里「よし、行こう!お姐さん何でもおごっちゃう♪」
一哉「あ、でもこの辺のお店は嫌だな。」
なんとなく理由は解った。
恐らく、さっき見た携帯の内容に関係しているのだろう。
絵里「OK~OK~、じゃぁ車で行こう!」

二人で家まで行き、車で出かけた。
昨日の教訓から、自分の車を出した。
運転中、知らないうちに
パッヘルベルのカノン
の鼻歌を歌っていた。

続く

水の中で③ 一哉Verを読む

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非公開コメント

No title

絵里の描写がすごくいい!!

経験者かと思うぐらい彼女の気持ちが伝わってきたよ!

>>サユ

おホホホ、経験者ですのよ。

というのは嘘で、意外と描写に気を使いました。
いつもは一哉書いて絵里を描くという感じなんだけど、
今回は絵里を書いて一哉を書いたんだ。

だから絵里のほうが力入っていると思う。
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