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水の中で④ 一哉Ver

水の中で① 絵里Verを読む
水の中で① 一哉Verを読む
水の中で② 絵里Verを読む
水の中で② 一哉Verを読む
水の中で③ 絵里Verを読む
水の中で③ 一哉Verを読む


2005年 8月27日
PM20:48

絵里は運転中カノンの鼻歌をうたっていた。
ハンドルに沿わせた指までリズムを刻んでいる。
会話がない。でもそれが心地よいと感じたのは始めてだった。
僕は絵里の鼻歌にリズムを合わせた。

絵里「さて、何食べようか~?」
そういえば、すっかり考えていなかった。
ただ、地元でなければ何処でも良かった。
一哉「な・・・」
絵里「何でも良いは無しだよ~!」
まさに図星だ、なんだか勝ち誇った絵里の顔が憎らしい。
でも本当に思い浮かばなかった。
一哉「う~ん食べたいのいっぱいあるんだよな~」
絵里「あ、じゃぁバイキング行こうか?」
結局絵里が決めた。
しまった!という感じの絵里の顔がたまらなく面白くて、ニヤケテしまった。

食べ放題のバイキングには20分前後で着いた。
かなり昔からある店だ。
席に着くなり、絵里は物凄い勢いで、料理を盛りにいった。
予想以上に幅広い料理の品揃えに、少々迷った。
肉・野菜・揚げ物等、それなりに彩を考えて皿にもった。
途中で、絵里と出くわした。
絵里の皿は、無数のケーキのみで構成されていた。
一哉(いきなりケーキ?世の中の女の人はみんなこうなのかな?)
僕は無言で考え込んだ。

席に着くと、僕は肉に噛り付いた。
お腹が空いていたから、物凄く美味しく感じた。
絵里はやはりケーキから食べている。
1つの目のケーキのフィルムを取ったと思ったら、
ドリンクを飲んでいる間に2つ目のフィルムを剥がしている。
信じられないスピードでケーキを食べていた。
暫らく二人は話もそこそこに食事に集中した。

ふと、絵里を見る。
ケーキを口に運ぶ途中で一時停止している。

一哉「どうしたの?」
絵里は少しびっくりしていた。
絵里を、カットしたケーキを皿に置いて、
少し背筋を伸ばすと、静かに話し出した。
絵里「あ、あのさっきは突然泣き出してごめんね。びっくりしたでしょう?」
予測はしていた。やはりその話しだった。
確かにびっくりした。
正直その理由は知りたかった。
でも遠慮とは違う、多分怖くて聞けなかったんだと思う。
一哉「うん。」
絵里「私が見ていた絵あるでしょ?」
一哉「父親というタイトルのやつだっけ?」
絵里「そう、あれ私が書いたの。完全に私の想像のお父さん」
父親を知らないとは聞いていた。
絵里「だけどね、泣いちゃった理由は別に想像の想像のお父さんだからじゃないんだ」
絵里「その絵の事はずっと忘れていたんだけど、見たらある人に似すぎていたの。」
一哉「ある人?」
絵里「うん。私の旦那。」
一哉「え??結婚していたんだ!」
これにはびっくりした。
今までそのような話しを聞いていないのもあったが、
絵里が結婚生活を送っている風には感じられなかった。
僕は、絵里の左手の薬指にを確認した。
絵里「うん、6年前にね。今は別居中なの」
絵里「あぁ、指輪は彼が浮気してから着けてないんだ。」
一哉「そうだったんだ・・・」
一哉(6年前?17で結婚したのか?)
絵里「それでね・・・」
絵里は話しに詰まっている。
少し沈黙が続いた。
一哉「もし話してくれるなら聞きたい」
絵里に話すか話さないかで、悩ませたくなかった。
絵里「ありがとう」

それからの絵里は堰を切ったかのように話してくれた。
話し始めた直後、年齢をサバ読みしていた事が発覚したがスルーした。
彼とは大学で出会い、
美大で絵里は彫刻を専攻していて、評価が高かったこと。
そして事故により彫刻を奪われた、
彼に支えられているうちに、結婚決意した。
しかし夫の浮気の告白により、傷つき実家に帰った事。
そして今日、夫への今までの愛情が、
父親としての存在のみに向けられていたかも知れない。
それにより酷い自己嫌悪に落ちいったという話しだった。

僕はそれを聞いて、絵里を励ましたかった。
できる事なら気の効いた言葉の一つもかけてあげたい。
情けなかった。
自分でいうのもなんだが、口は回るほうだと思っていたし、
年の割には語彙も豊富で頭もそこそこいいと思っていた。
思い上がりだった。
話してくれた絵里に対して何も言葉が浮かばない。
今まで自分が口がしてきた言葉の数々。
どれも薄っぺらい・・・
僕が自分で口が回ると錯覚していたのは、ただの受け答えだ。
適当に話しを返し、適当に話しを振る。
時には嘘をついてごまかし、嘘をついて自分のプライドを守ってきた。
今生きてきた迄の間、唯一かもしれない存在。
嘘の無い相手、絵里。
そんな絵里に何も言えなかった。
嘘の無い自分は、予想以上に脆く、何も持たない存在だった。
情けなかった。
気持ちは一杯湧き出ている。
元気付けたい・力になりたいという気持ちが。
でも、裸の僕は言葉をもっていなかった。

絵里「あ、ゴメンゴメン!食べよ♪食え、食え♪」
絵里に気を使わせてしまった。
その後も絵里は色々話してくれたが、
自分の無力さに絶望した僕は、そんな絵里の気遣いに答える事も出来なかった。
でもこのまま終わりたくは無かった。
絵里を少しでも楽にしたかった。
多分恋している訳ではないと思う。
かといって友情でもないと思う。
でも、このままだと後悔すると思った。
夏の間に後悔には慣れたつもりだった、
でも今は、後悔したくない。

一哉「絵里さ・・・まだ時間平気?」
こんな言葉を言うだけでも勇気が必要だった。
絵里「ん?平気だよ~、ていうか一哉は大丈夫なの?もう10時過ぎてるよ?」
嬉しかった。例え大丈夫でなくても大丈夫だ。
一哉「うん、うちは大丈夫!」
絵里「へっへ~じゃぁ何処行こうか~」
一哉「小学校のプール」
変な意味では無く、2人きりになりたかった。
絵里「え?」
そういった絵里の顔はまた停止していた。



2005年 8月27日
PM22:28

絵里は車を裏門の横に停めた。
車から出ると、熱帯夜特有の蒸し暑い世界が広がっている。
学校に進入する。
二人とも何度も往復した道のりなので、進入は慣れたものだ。
手際よく更衣室の方から進入する。
プールサイドは、とてもみずみずしい風が吹いていて気持ちよかった。

絵里「キモチーね~水着持って来れば良かったな~」
プールサイドをフラフラ歩きながら絵里は言った。
一哉「そうだね、流石にお互い裸はね・・・」
絵里「見たい?・・・・」
心臓が止まるかと思った。
絵里「うっそ~~ん♪」
こんなに絵里に怒りを覚えたのは初めてだった。
絵里「へっへっへ~、ごめんね♪見せたら不倫になっちゃうもん♪」
一哉(確かに、見せるのと見られるのは違うな。)
しばらく無言で一緒にプールサイドを歩いた。

僕は勇気を出した。
一哉「あのさ、絵里はこれからどうするの?」
プールサイドをフラフラ歩いていた絵里の動きがピタリと止まる。
絵里「どうする?ってどれのこと?」
一哉「旦那さんの事。」
絵里が嫌がる話しなのは解っていた。
絵里「解らないよ・・」
一哉「解らないの?」
絵里「解らないよ!だって・・・・」
僕の前で初めて絵里が声を荒げた。
僕は次の言葉を待った。
絵里「一哉にはまだ解らないよ・・・」
一哉「解らないよ、でも絵里にはわかっているから悲しいんでしょ?」
絵里「簡単に言わないでよ!あんなに私の為に尽くしてくれた人を、
今更愛してなかったなんて認められないよ!」
一哉「でも、え・・・・」
絵里「もう知ったような事いわないで!」
何かが吹っ切れた。
一哉「だったら今から愛せばいいじゃんか!」
一哉「優しくされたその時に愛してたとか、愛されてたとかわかんねーよ。」
一哉「でも、もうその時自分がどうなのか解らないんだろ?今どんなにその時を思いだしたって解らないんだろ?!」
一哉「もう、今の絵里は旦那さんを昨日の絵里のように思えないんでしょ?」
一哉「だったら今の絵里で旦那さんがしてくれた事・思ってくれていた事をもう一度愛せればいいんだよ。きっと・・」
一哉「だから・・・これからは必死に探すの辞めて、もっとゆっくり思い返そうよ・・」
自分でびっくりした。
頭なんか全然使わなかった。
こんなに声を荒げたのは何年ぶりだろう。
頭を介さないで気持ちをそのまま言葉にしたら、それはとても攻撃的な言葉になった。

改めて絵里の方を見た。
絵里の眼は涙を溜めていた。

絵里「そっか・・今からか・・」
絵里「私何焦ってたんだろうね♪」
絵里「そうだよね~知っちゃったんだから、その時どうなのかって考えても解らないよね・・・」
絵里がゆっくり近づいてきた。
絵里の両手が背中に回り引き寄せられ、抱きしめられた。
絵里「ありがとう・・・」
耳元でそう言うと、更に強い力で抱きしめてきた。
僕も絵里の背中に手を回した。
気恥ずかしさが邪魔して、それが僕の最大限の許容だった。

続く
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No title

おおぉぅっ
一哉くんっ。キミすごいよっ。えらいよっ。
後悔して嘆いて悩んでても仕方ないんですよっ。
おぉぉぅっ。

…絵里バージョンを早く読みたいでーす。

No title

人妻だったのか・・・
やっぱ、ロマンですなぁ~~~

応援ポチっとしていきます!

>>カラバシュさん

一哉君いいこです!
がきんちょで、ちっこくて、プライドばかり高いけど、
必死男なるっす!

>>サイドバックさん

弱った人妻であります!

ロマンですね、
しかし中学生には早すぎるロマンっす!

No title

いいね!なんか自分が絵里になったww

イササカ先生!人気急上昇ですよ!ww

頭で考えないで言葉が次々でるって,その人が
でるから一哉株いい男じゃん♪
こりゃ絵里側の悩むねぇ~ww

>>サユ

コメントありがとちゃん。
む~サユが絵里になるには、@5年後に旦那の浮気が必要ですw

一哉君が頑張りすぎたせいで絵里編が・・・・
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