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水の中で A 智成ver


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2005年  8月25日
PM22:09

土砂降りの雨の日だ。
私は家に帰ってきた。
部屋の中は暗い。
つけっ放しエアコンの音だけが鳴り響いている。
帰宅時のこのシュチエーションにもだいぶ慣れてきた。
もう1ヶ月くらいになるのか?

私は当たり前のようにTVをつけ、服を着替える。
TVで速報のテロップが画面上に表示されている。
東京都多摩西部に雷注意報が発令されたらしい。
今絵里がいる地域だ。

絵里とは私の妻の名だ。
まだ妻と言えるか解らないが、世間ではそうなっている。
別に愛していない訳ではない。
むしろ、この世の誰よりも愛していると断言できる。
しかし絵里はこの家にいない。

私の名前は智成。

インテリアデザイナーをしている。
現在はあるブランドに所属しているがいつかは自分のブランドを持ちたいと思っている。
妻の絵里もこの私の夢に賛同してくれていた。

絵里との出会いは大学時代から始まる。


1996年5月

初めて出会ったのは、
絵里自身ではなく、絵里の作品と出会った。
その彫刻は木で出来ていた。
それは躍動感溢れる魚であり、その魚には3枚の大きな鳥の羽がある。
その魚は水中で勢いをつけ、たった今水面から空へ羽ばたこうとしている。
そんな彫刻だ。
三枚の羽はあるがその魚は決して美しくはない。
ただその魚は跳ねるのではなく、羽ばたく。
もう一度水中に戻ってくる、そんな事は一切考えずただ当たり前のように空へと向かっている。

衝撃的だった。
美大だから多くの芸術と触れる機会は多い。
しかし、これ程多くのメッセージを雄弁に語り、思いを想像させる作品に始めて出会った。
デザイン科の私と違い、始点に一切の制限をもたないこの作品の作者に強烈に興味をもった。

そして絵里自身に初めて会ったのは、
その年の冬、デザイン科と彫刻科の合同の飲み会だった。
初めにこの飲み会の話しが来て以来あの魚の作者、飯野絵里を知りたかった。

彫刻科の友人に聞いてみた。
智成「飯野絵里って人今日来てる?」
友人「ん?絵里?来てるよ、ほら、あそこで立ってクダ巻いている奴だよ」
そういうと友人は指を指す。
指す方向に、一人の女がジョッキ片手に立ち上がり、何やら騒いでいる。

絵里「だからね~、若いうちに行かなきゃ意味ないのよ~、海外は。
私なんてね~5000円の下着を買うくらいなら、そのお金を海外に回すわよ~。
聞いている?感性はお金で買えないのよ?勿論私だってお金じゃ買えないわよ!
失礼しちゃうわ!」
飲み会が始まって一時間も経たないうちに出来上がった女がいた。
彼女が飯野絵里だろうか?
智成「あの人?」
友人は黙ってうなずく。
絵里「だから私は旅行サークル作る!決めた!今決めた!
そこらへんのハワイとか~グアムとか~そんなチャラついたサークルじゃないわよ!
バックパッカーよ!そうバックパッカーズよ!」

思い描いてた印象とはかなり違った。
別に清楚で清純で大人しい女性を想像していた訳ではないが、インパクトが強過ぎた。
それからも絵里は、立ったり座ったり笑ったり大忙しだ。
ただ、片時もジョッキを置く事はなかった。
流石彫刻科だ。

暫らくして話しかけてみた。
智成「あの、飯野絵里さん?」
絵里「ん~そぉぉおですよ~」
目が純血し、あまりろれつが回っていない。
すっかり出来上がっていた。
智成「羽の生えた魚作品だけど・・・」
絵里「魚?ゴメンもう全部食べちゃったよ~、でも食べる?よし食べるか!
すいませ~ん、お刺身くださ~・・・」
智成「いや、刺身じゃなくて彫刻の・・・」
絵里「彫刻??あぁぁ~作品ね~あれはね~。戒めなの~ふふ・・・」
そういうと絵里は横になり寝てしまった。

その後結局絵里は、親友の女友達に抱えられてタクシーで帰っていった。
初めて見た絵里の印象は只の飲んだッくれだった。
しかし、唯一まともに話した、会話に〔戒め〕という言葉が使われていた。
その言葉が印象的だった。
あんなに自由と期待を感じた作品に、作者本人から〔戒め〕という言葉が出てくるとは思ってなかったからだ。

後日大学のキャンバス内の掲示板にこんな事が書かれた張り紙があった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
来たれ!バックパッカー!
ガシガシ海外行っちゃうよ~♪
世界がみんなを待っている!

連絡先:彫刻家2年 飯野絵里

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はこの大学に入り、初めてサークルに入った。



2005年  8月25日
PM23:17

絵里がいなくなってから、私の食生活は乱れていた。
食べたり食べなかったり。
大体が外食で済ましてしまう。
絵里は料理が上手かった。
上手いだけでは無くどちらかというと健康志向で、
聞いたことも無い食材を美味しく調理してくれていた。
凄く出来た嫁だ。
プロポーズは絵里からしてきた。
しかし付き合うに当たって告白したのは私からだった。


1997年2月

私は絵里の主催するサークルに入った。
当初は私を含めた3人だけだったが、年が変わる頃には10人以上のメンバーがいた。
絵里は人間的な魅力によるものだろう。

この年、少数でトルコに向かった。
目的は宗教建築だ。
主にモスクを回る。
ディヤルバクルという地域の ウル・ジャーミイで告白した。

その時絵里はモスク内の回廊の柱の紋様を熱心に見ていた。
話しかけるのも憚ったが、今しかチャンスがないと思っていた。


私は絵里に惹かれていた。
サークルに入るとき、絵里に会いに行った。
飲み会の席とは全然違う印象だった。
絵里「初めまして♪」
絵里はそう言った。
覚えてないようだった。

それから数ヵ月後初めてバックパッカーズとしての活動があった。
場所はインドだった。
私は初めての海外だった。
その異国の地では日本人としての私の持つ武器・知識は一切無意味だった。
良く解らない所で途中下車してしまった事がある。
正直メンバーは途方に暮れた。
しかし絵里は終始前向きだ。
というよりは上向きだ。
絵里は積極的に動き、現地の人に身振り手振りでなんとか自分達の要求や質問を伝えようとしている。
落胆して私を含めたメンバーはその行動に勇気付けられた。
私は絵里に憧れた。
絵里が私をもっと高いところに連れて行ってくれるかもしれない。
そして、いつかは絵里の横に居たいと思った。


そして今絵里に思いを告げるチャンスが来た。
トルコに来る前から張り切っていた訳ではない。
衝動的だった。
思いがこみ上げるという奴だ。

智成「絵里・・・・」
絵里「ん???どうしたの~?」
智成「好きなんだ、絵里が。付き合って欲しい」
自分で言っておいてあまりにシンプル過ぎた言葉に少し笑えた。
絵里「???どうしたの?マジ???」
智成「うん、マジ」
絵里は暫らく考えている。
実際は30秒くらいだろうけど、物凄く長く感じた。
絵里「お姫様のように大事にしてくれる?」
智成「かぐや姫のように大事にする」
絵里「♪じゃぁこちらこそよろしくお願いします♪」
智成「ありがとう、大事にする。」
絵里「知ってる?かぐや姫には一杯貢物が必要なんだよ~」
智成「あ、そっか、じゃぁ親指姫みたいに大事にする」
絵里「あははは♪」
そんな感じで二人の交際は始まった。





2005年  8月26日
AM09:17

気だるさと共に目を覚ました。
ソファーに横になったまま寝たようだった。
絵里が居なくなってから、寝室でまともに寝ていない。
寂しいからか?
理由は解らないが、寝室では寝付けなかった。
カーテンを開けてみた。
外は物凄くいい天気だ。
ベランダからの景色にある、井の頭公園の池がキラキラと太陽を反射して輝いている。
昨日の雨の影響か少し湿度が高い。
しかし、その蒸し暑さは嫌いではなかった。
TVを付けると昨日の多摩西部は落雷の影響で、家電が壊れた家が多発しているらしい。

私は携帯を手に取った。
絵里に連絡してみようと思った。
しかし、文章が思い浮かばない、絵里が出て行ってからずっとこうだ。
文章は作っては消し、完成したと思っても結局送れないでいる。
暫らく作っては消しと繰り返していた。
しかし結局完成には至らなかった。

外はいい天気だ。
絵里が出て行ってから色々な日用品が切れ始めている。
出かける事にした。

学生時代に絵里が住んでいたアパートの近くに今住んでいるマンションはある。
そのアパートは今でもありその前を通ってみた。
今の私にはこれが最大限の勇気かと思うと情けなくなった。

そのアパートに向かう途中に大きな十字路がある。
そこで昔事件は起きた。


1998年7月

その日は大学にいた。
親しい教授が教えてくれた。
絵里が自宅近くで原付に乗っている時にトラックに巻き込まれたと。
聞いた瞬間、私は絶望した。
巻き込まれたという表現では、もう助からないと思った。
私は病院に向かった。

病院に着くとそこには絵里の母親と妹がいた。
妹は絵里に似ていて最初見間違えるほどだった。
私は挨拶と自己紹介もそこそこに、母親から事情を聞いた。
どうやら巻き込まれたといっても、体が潰れたりとかではないらしい。

ただ転倒の際、頭を強く打って意識が無いらしい。
私も絵里の母親も妹も、その日は一日中病院の廊下で過ごし、絵里の姿を確認できたのは朝方になってからだ。

朝方絵里の顔を見た。別に何日も会っていない訳ではないが、
その顔に懐かしさと愛おしさを感じた。
とても静かな顔だ。
意識は無いが、医師の言うには脳波は正常らしい。
こんなに静かな顔をしてどんな夢を見ているのだろう。
嬉しくも悲しくも無い、ひたすらに静かなその表情に何故か神々しいとさえ思った。

その日の昼くらいに絵里の母親の進めもあり、一旦家に帰った。
医師の 脳波は正常という話しを聞いて安心したのもあった。
家についてシャワーを浴びた。
そこまでは覚えているが私はいつの間にか寝たらしい。

朝方絵里の母親の電話で目を覚ました。
絵里が目を覚ましらしい。
私は喜び勇んで病院へ向かう。
途中絵里が事故にあった十字路に、細かく砕けたブレーキランプの残骸が散乱してた。
私は嫌な予感がした。



2005年  8月26日
AM13:20

日用品の買い足しから帰ってきた。
どういう気まぐれか解らないが自炊をしてみようと思った。
もう数年以上このマンションに住んでいるが、キッチンは私にとって未知の場所であった。

料理好きの絵里は多くの調理器具・調味料を常備し、しかもこれらを持て余す事はなかった。
私はフライパン1つも適当な物を選べないでいた。
とりあえず一番大きなものを選んだ。
大は小を兼ねる。これが判断理由だった。
フレンチトーストを作ってみた。
食パンを適当な大きさに切り、玉子をかけて焼いてみた。
何かが違う、こんなフレンチトーストを見たことが無い。
明らかにパンと玉子が別別に焼かれ、フライパンから黒煙が立ち上る。
パンは全然焼けている気配はないのに、玉子だけがどんどん焦げていく。
やっぱりこんなフレンチトースト見たことない。
とりあえず火を止め皿に盛って食べてみた。
パンと焦げた玉子の味がした。
やっぱりこれはフレンチトーストでは無かった。

出来損ないのフレンチトーストを喉に押し込み、少しネットで調べてみた。
どうやら私がフライパンと言っていたのは中華鍋らしい。
先に調べれば良かった・・・
パソコンを開いたついでにメールの確認をした。
jhonkosuからメールが来ていた。
jhonkosuとは私の所属するデザイン会社だ。
メールの内容は私がデザインしたダイニングテーブルが、海外のインテリア雑誌でベストデザイン賞にノミネートされたらしい。
私のキャリアは順調そのものだ。
私だけを置いて、どんどんキャリアだけが舞い上がっていく。
私のキャリア・作品達は私を置いてく。

変な話しだが仕事での成功が苦痛でしかない。
その苦痛に気付くのにも時間が掛かった。
もはやデザイナーですらない。
酷い眠気が襲ってきた。

水の中で① 絵里Verを読む
水の中で① 一哉Verを読む

水の中で② 絵里Verを読む
水の中で② 一哉Verを読む

水の中で③ 絵里Verを読む
水の中で③ 一哉Verを読む

水の中で④ 絵里Verを読む
水の中で④ 一哉Verを読む

水の中で⑤ 絵里Verを読む
水の中で⑤ 一哉Verを読む



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非公開コメント

コバワ♪
久し振りですね~♪待ってましたよ~!!
そして今までとは違う角度からですね!
どうつながっていくのか…ムフフ

そしてΣ(゚口゚;)//
なんかっ!!会社になって登場してるお方がいらっしゃいますぞよっ?!
いいなっいいなっっいいなぁぁっ!!
オイラもいつか出してくれぇぇぇっ!!

>>カラバシュさん

こんばんわ~、
結構前に書いていたのですが、今更UPですW

そうです、例の人登場してますw
意外と個性的な名前の(HN)が多いので、人物としてはなかなか出演させ辛いですw

間違いな私はでれませんねw

キタ ━━━ヽ(´ω`)ノ ━━━!!
デザイン会社です!

待ってましたよwありがとうございます!こういった角度で見ると、なんかホント会社に見えてきた♪

実はね、今日現場待機してるとき、小説、最初からおさらいで読んでました。なんつー良いタイミング!

>>JKさん

こんばんわ~
予告どおり勝手に登場させちゃいましたw

当初はjhonkosuさんの名前をプロファイルして、智成さんに役にあてがおうと思ったのですが、挫折しデザイン家具のメーカーですw
ラテン語とか混ぜるとそれっぽく見えるかな?
と思ったのですが、以後使うのにしんどいと思いまんま使用ですw

めっちゃいい感じで読んでたらジョッコスン出てきたからなんだか笑い出てきてギャグ漫画のような読み具合になってもうたww
あ,でも最後だけだからね☆

とても素敵な男やった!グ~~~

>>サユ

なにを~笑い事じゃないぞ~。

椅子がひとつ10万円するくらい高級なインテリアデザイン会社だぞ!(設定)

でもなんかブランド名みたいでかっこいいよね~。

ちなみにサユはもう出てるの知ってた?

え??どこに??
わかんない,,,よ??

>>サユ

ふふふふふふ、

漢字とか当て字(予想)からわからんだろうね~www

全然わからん^^;
教えてくれんのかいe-263
登場人物あとは智成だけ,,?男??えぇ??

>>サユちゃん

【神の声】
ちなみにサユはもう出てるの知ってた?

つまり過去形じゃな~絵里Verに出ているぞよ~

このもじゃった神サマナンバーまで教えてくれればいいのにケチンボ神め~~^^;;
絵里の妹だなww
もうわけわからん^^;

>>サユ

正解!

ふぉっふぉっふぉ~では神様は寝るぞよ~

お~~~(○゜ε゜○)!!
今度ゎ絵里のダンナバージョン(((●`ψψ´))
真相解明されてくみたいでおもしろいです!!!

早く続きかいてください!!!

>>ァイちゃん

そうなのよ~、普通番外編とかって本編終わってからだけど、なんか色々な人が薄いまま終わりそうだったから、ちと味足してみた。

よく知らない人の悪い行動は無条件で非難したくなるけど、よく知っている人だとなんか悲しくなったりするじゃん?
いい事も悪い事も、裏にある経緯って大事だと思った。

最新記事へのコメントじゃなくてごめんなさーい。

あーわたしもモスクの中で愛の告白をされてみたいです。
どっかのカップルみたいに皆既日食を見ながらなんて
興味がありません。
田舎のちっちゃい、青いタイル張りのモスクで
コーランをバックミュージックに。
相手が誰であろうと一つ返事でOKです。

>>melaちゃん

いよっす!

なんかモスクとかって凄くいいね~、
というか、宗教建築全般大好きなんだけどね。

そっかmelaちゃんが欲しい時は中東に連れて行けばいいのか、というかまず中東に付いてきてくれるかだな・・・
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